三密堂【密教関連】のトピック

『般若心経秘鍵』13
2014/02/04
投稿者
愚道
内容
「次の二字は密蔵を開悟し甘露を施すの称なり。次の二字は大多勝に就いて義を立つ。次の二字は定慧に約して名を樹つ。次の三つは所作已弁に就いて号と為す。次の二つは処中に據りて義を表す。次の二つは貫線摂持等を以て字を顕す。
 若し総の義を以て説かば、皆、人法喩を具す。斯れ則ち大般若波羅蜜多菩薩の名なり。即ち是れ人なり」

 これを現代語訳すると、

「次のハ・シャの二文字は『説』と訳し、秘密の教法のすべてを開悟して、甘露とも言うべき仏の教法の神髄を示す。次のマ・ハの二文字は『摩訶』と音写して、大きい、多い、すぐれているなどの意味を持ち、次のハラ・ジャの二文字は般若と定と智慧を集約し、『般若』の名を樹立しています。次のハラ・ミ・タの三文字は、なすべきことをなし終えたことを表して、『波羅蜜多』と音写し名号としています。次のフリ・ダの二文字は『心』と訳し、般若菩薩の心の中心にある心を依りどころとして、意味を表しています。次のソタ・ランは『経』と訳し、仏の教法のすべてを糸線で貫き通し、心身に保持することを字に顕しています。
 もし、この経題の総合的な意味を説明しますと、人と法と象徴とが備わっています。この経題の中心は大般若波羅蜜多菩薩の名前ですので、これは菩薩という仏格を備えた人です」

 となります。

コメント 1件

金剛居士
金剛居士さん

2014/02/08 [22:52]

愚道さん、こんにちは。


『ボダバシャマカハラジャハラミタフリダソタラン』となっている箇所は梵字表記ですね。写本によって微妙に違うのかもしれませんが、大蔵経テキストデータベースだと「ボダ」の部分はbuddhāとなっています。

「ボダバシャ」部分のbuddhābhasaは、正しくはbuddha-ābhāṣa([m]談話,言語;諺,格言)なのでしょう。あるいはbuddha-ābhāsa([m]光沢,光;色;外観,類似;影像,幻影;[漢訳]光,明,所照;所見,現前,現法相;……)なのかもしれません。こちらだと「仏説」という訳にはなりませんが、仏陀(の境地)の現前というニュアンスが含まれるのではないかと思います。そもそも空海は、般若心経について言葉を超えたレベルを明らかにしようとしたのですからね、仏の「説」に限定する必要はないでしょう。

「ハラジャ」部分はprajñā(般若)であり、これは「定にもとづく慧のはたらき」だとされています。

「ハラ・ミ・タ」部分は、正しくはpāramitāですから、「むしろハ・ラ・ミ・タ」と四文字(四音節)にすべきですが、『般若心経秘鍵』の梵字を見ると、pramitaとなっています。

また、hṛdayaとなるべきところがhṛdaと梵字表記されていたりして、これが空海の語学力の限界なのか、それとも参照した梵文テキストがそうなっていたのか、多少疑問が残ります。

また、法隆寺の梵本にも存在しないように、小本の般若心経にはもともとスートラは無かったはずなのですが、『般若心経秘鍵』には「ソトラン」(経)が入っているという点にも注目したいですね。

漢訳で「般若心“経”」と読んでいる人を念頭に置いてスートラの説明をするためにあえて付け加えたのでしょうかね。あるいは、空海が参照した梵本にはスートラという文字があったのでしょうかね。ちなみに、大本の般若心経にはスートラが入ってきます。説處などを増広してお経の体裁を整えましたから、まあ当然でしょうが。




~Φ 金剛居士 Ψ~
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